一人親方でもアウト?外注費が給与認定される典型パターン〜税務調査の実例〜

「うちはちゃんと請負契約書も交わしているし、請求書も揃っているから大丈夫」
そう自信を持っている経営者に限って、税務調査で手痛い指摘を受けるのが、建設業における**「外注費か給与か」**の問題です。
特に、一人親方や外注中心で現場を回している会社ほど、この論点は避けて通れません。
今回は、実務上よく見られる事例をもとに、税務調査でどのように判断されるのかをストーリー形式で解説します。
※本記事は実務上よく見られる事例をもとに元国税職員の税理士が再構成したものです。
Contents
【実録】税務調査:ある日の応接室にて
1. 綻びのきっかけ:車両と道具の「無償提供」
調査官は、机に広げられた現場写真の一枚を指さしました。
調査官:「この写真、Bさんが作業していますね。彼が乗っているトラック、御社のロゴが入っていますが、Bさんの持ち物ですか?」
A社長:「いや、それはうちの予備の車両です。彼が独立したばかりで車を買う余裕もなかったので、そのまま使わせているんですよ。道具一式も、うちの倉庫にあるものを貸し出しています。まあ、身内みたいなものですから」
▶️ここがポイント 自前の用具を持たず、元請けの資産を無償で利用している状態は、独立した事業主としての外形を大きく損ないます。
2. 時間的・空間的な「支配」
調査官は、作業日報をめくりながら質問を重ねます。
調査官:「Bさんは毎朝8時に御社の土場に集合して、社員と一緒に現場へ向かっていますね。帰宅も会社に戻ってからですか?」
A社長:「ええ、効率がいいですから。朝礼(KY活動)も社員と一緒に必ず参加してもらっていますし、開始・終了時間は社員と同じです」
調査官:「安全管理としての朝礼は理解できます。しかし、この日報には『社長の指示で別現場へ移動』とありますね。これは安全管理ではなく、職人を配置換えする指揮命令関係ではないですか?」
3. 「危険負担」の欠如
調査官はさらに踏み込みます。
調査官:「作業に不具合があった場合、Bさんは自己負担で補修したり、報酬を減額されたりしますか?」
A社長:「いや、専属で頑張ってくれていますから。やり直しの材料費も手間賃も、うちが負担しています」
▶️ ここがポイント 請負契約では「完成責任」が原則です。 作業した時間に対して必ず報酬が支払われ、リスクを元請けがすべて負う場合は、**「労務の提供(給与)」**と判断される方向に傾きます。
4. 業務の代替性と請求書の実態
調査官:「Bさんが休む場合、別の職人を手配することは可能ですか?」
A社長:「それは無理です。Bさん本人に来てもらわないと困ります」
調査官:「請求書はBさん自身が作成していますか?」
A社長:「忙しいので、うちの事務員が代わりに作っています」
▶️ ここがポイント
本人しかできない(代替性がない)
報酬も実質固定
請求事務も会社側
これらが揃うと、「独立した事業者」とは評価されにくくなります。
税務署の結論:形式ではなく「実態」で判断される
調査官は静かに告げます。
「Bさんは形式上は個人事業主ですが、実態としては御社の指揮命令下にあり、時間や場所も拘束されています。この状況は、従業員(給与所得者)と判断される可能性が高い状態です。」
この後に起こり得るリスク
このように判断された場合、会社には以下のような影響が生じる可能性があります。
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消費税: 外注費として処理していた部分について、仕入税額控除が否認される可能性
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源泉所得税: 過去分の源泉徴収漏れを指摘され、会社がまとめて納付するケース
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加算税・延滞税: 結果として大きなキャッシュアウトにつながることも
否認を防ぐためのチェックリスト(総合勘案)
税務調査では、契約書の形式ではなく「実態」が総合的に判断されます。以下の項目に当てはまる場合は注意が必要です。
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[ ] 時間や勤務場所が会社に拘束されている
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[ ] 道具や車両を無償で借りている
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[ ] やり直しのリスクを外注先が負っていない
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[ ] 本人以外が代わりに作業できない
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[ ] 報酬が固定的で、実質的に給与に近い
▶️ 2つ以上当てはまる場合は、税務上のリスクが高い状態といえます。
まとめ:建設業の「当たり前」は通用しない
建設業界では当たり前とされている慣習でも、税務の世界ではそのまま通用しないケースが少なくありません。
「身内だから」「長く付き合っているから」といった関係性があるからこそ、実務上は柔軟に対応しているケースも多いと思います。
一方で、税務調査ではあくまで「実態」ベースで判断されるため、そのギャップが指摘につながることがあります。
最後に
ここまでお読みいただきありがとうございます
今回のような外注費と給与の判断については、「どこからがアウトなのか分かりにくい」というご相談を受けることが非常に多い論点です。
実際には、
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「昔からこの形でやっている」
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「他の会社も同じようにやっている」 といったケースも多く、気づかないうちにリスクを抱えていることもあります。
ただ、この分野は事前に整理しておくだけで防げるリスクも多いのが特徴です。すべてを見直す必要はありませんが、少なくとも「なぜ外注なのか」を説明できる状態にしておくことが重要です。
「うちのケースは大丈夫なのか?」 この段階で確認しておくことが、将来のリスクを大きく減らします。形式だけでなく実態を一度整理するだけでも、税務調査への対応力は大きく変わります。
▶️ 建設業の税務調査で特によく見られる他のポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。 →建設業の税務調査で必ず見られる5つのポイント〜調査官の視点〜
現在、LINEにて初回無料でご相談を受け付けています。また、お問合せフォームやメールでのご相談もお受けしております。
「このケースは外注で問題ないのか」「今の契約や運用にズレがないか」といった段階でも構いませんので、気になる点があればお気軽にご連絡ください。
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